【現役客室乗務員が語る】コロナ禍におけるCAのおもてなしの形と留意点
コロナ禍において、CAのおもてなしの形が変わってきたなぁ。
そう感じることが多いです。
今後、ワクチンが普及し、コロナウイルスへの集団免疫ができるにつれて、航空需要は戻ってくると思いますが、完全収束にはもう少し時間がかかると思われます。
またSARS、MARS、コロナという流れからもわかるように、「感染症が人類に大きな影響を与える」という状況はこの先も起こりうるでしょう。
そこで今回は、CAを目指している方、そしてこれからCAを目指す方に向けて
コロナ禍において、現役客室乗務員が感じるおもてなしの変化と留意点について、お伝えできればと思います。
コロナ禍における、お客様の声
コロナ禍でおもてなしをしている中で、お客様についてしみじみ感じるのは次の2点です。
・人によって、コロナウイルスに対する意識が異なる
・お客様同士に向けたご意見が多い
では、それは実際にどんなことなのか、お客様からのご意見の具体例をご紹介します。
・「マスクをしていない人がいるので、注意して欲しい」
・「咳をしている人がいるので、何とかして欲しい」
マスクをしていない人がいるので、注意して欲しい
「マスク着用拒否をした旅客がいた為、飛行機が緊急着陸を行った」そんなニュースは記憶に新しいかもしれません。これは、お客様がマスクをしないという断固たる意志を持っていた例です。
一方、今回ご紹介する事例は「お客様が無意識のうちに、マスクをしていない時間が長くなってしまった」という事例です。
皆さん、カフェに行った時、また外食をした際、食事が終わった後、すぐにマスクを着用していますか?
意識的にされている方もいらっしゃると思います。ですが、例えばカフェなどで継続的に飲食をしている場合などは、なんとなくなぁなぁになってしまうという状況も、理解できるのではないでしょうか。
飛行機でも、お飲み物やお食事を提供しています。特に飲み物などは、いっきに飲まずに、少しずつ召し上がることも多いですから、〈本人にしてみれば飲食中だけれど、他の方からするとずっとマスクをしていない人に見えてしまう〉という状況も起こり得る訳です。
実は、この個人の間の感覚のずれが、お客様同士のクレームにつながることがあります。
機内でお客様に「マスクをつけていない客がいるから、声を掛けてくれ」と言われた経験は、私も幾度かありますし、同じような事例を他のCREWから伺ったことも多々あります。
その場合、もちろんマスク着用にご協力いただきますが、その際の言葉掛けの仕方、またお客様同士のトラブル回避への配慮が必要不可欠です。
もちろん「周りのお客様からお声を頂いております。」とは言いません。嫌な気分にさせてしまいますし、トラブルの原因になります。
その場合、まずはそのマスク未着用のお客様に何気なくお声掛けしつつ、さらっと「ご飲食がお済でしたら、マスクをご着用ください」という旨をお伝えします。
その際の会話の中で、お客様の体調や周りのコロナウイルスの状況などを世間話的に伺いつつ、最後にマスク着用を促すことで、お客様の為に申し上げているというニュアンスでお伝え出来ると思います。
咳をしている人がいるので、なんとかして欲しい
「咳をしている方がいるから、なんとかして欲しい」というご意見も頻繁に頂きます。
この場合、空席があれば、ご意見なさったお客様に座席移動をご提案します。
ですが、空席がない場合、または座席移動をお断りされた場合は、咳をされている方にアプローチします。
咳の原因のひとつは、喉の乾燥です。
ですので、《喉を潤す為に》とお飲み物や飴玉をお持ちしたり、
《喉の乾燥を抑える為》という理由で、マスクをお渡ししたりします。
大切なのは、咳をしているお客様の体調に寄り添った対応をすることです。
咳って、きっと悪気はないですよね。咳の症状は本人もお辛いと思います。または、無意識かもしれません。
だからこそ、お客様が嫌な思いや引け目を感じないように、なるべくお客様の体調を心配する心が伝わるように努めます。
また、わたくしども客室乗務員がお客様にアプローチしている姿を、ご意見されたお客様は見ていらっしゃるはずですから、
しっかり対策しているという安心感を感じてもらえるのではないでしょうか。
では、これらの事例を踏まえ、次章では、コロナ禍におけるおもてなしの在り方について、まとめていきたいと思います。
コロナ禍でのおもてなしとは?
コロナ禍のおもてなしにおいては、
お客様に安心感や快適性、清潔感を感じてもらう
という視点を、今まで以上に大切にする必要があるなと感じています。
具体例は次の5点です。
コロナ以前も行っていたことがほとんどですが、会話以外の方法でおもてなしを行うという観点から、コロナ禍において特に意識するべきだと感じる5項目です。
①お客様のマスク着用を徹底
②お客様が不安感、不快感を感じていないかを注意深く観察
③アイコンタクトを大切にし、おもてなしの心を伝える
④お化粧室や機内の清掃を徹底し、清潔感を保つ
⑤それぞれのお客様のコロナに対する考え方に合わせた接客をする
お客様のマスク着用を徹底
まず、お客様がマスクをしているかという点を意識的に確認する必要があります。
「そんなこと、当たり前じゃん?」「マスクをしてない方がいたら、すぐに気づくでしょ?」と思う方もいるかもしれません。
ですが、飛行機は大きいもので500名のお客様がいらっしゃるので、全員のマスク着用を徹底するには、意識をもって確認することが必要でしょう。
飲食店などでは、マスクをつけていない方がいる環境が自然である為、しっかりと意識しないと、マスクをつけていない方を目にしても、センサーが働かず、気づくことができないかもしれません。ですから、「シートベルトをしていますか?」と同じくらいの意識で、お客様のマスク着用を確認することを文化とすることが必要なのだと思います。
不安感、不快感を感じていないか、注意深く観察
また、お客様が不安感や不快感を感じている際にしっかりと気づくことが出来るよう、お客様の目線や仕草から何か発せられていないか、注意深く観察することが大切です。
マスクにより目から下が覆われている為、お客様の表情が読み取りづらくなっているので、目線や仕草からいかにお客様のお気持ちを汲み取れるかが鍵になってくると思います。
不満や我慢を抱えながら機内でお過ごしになったお客様にとって、その気持ちはそのまま航空会社への不満や不信感につながってしまうものです。
アイコンタクトを大切にし、おもてなしの心を伝える
感染防止の観点や、個々のお客様によってコロナウイルスに対する考え方が異なることから、お客様にお声掛けすること、積極的にアプローチすることが、必ずしも正解とはいえないのが現状だと思います。(コロナ以前もそうですが。)
だからこそ、会話ではなく、目から伝わる笑顔やアイコンタクトでおもてなしの心をお伝えすることも大切だと思います。
お化粧室や機内の清掃を徹底し、清潔感を保つ
お客様との接点がどうしても減りがちになる中、おもてなしの心や航空会社のブランドを体現する1つの表現方法として、機内の美化に努めることがあると思います。・お化粧室が綺麗 ・ごみをすぐに回収してくれる、そんなことから生まれる清潔感や快適性を、お客様に感じて頂けたらと思います。
それぞれのお客様に合わせた接客
首相官邸のホームページによると、マスクを着用しての5分間の会話は、1回の咳と同等のリスクがあるようです。機内で一人のお客様とそれほど長くお話することはなかなかありません。
ですが、先程から申し上げている通り、コロナウイルスに関する考え方は個々によって異なります。少しの会話でも、不安感や不快感を感じる方もいらしゃるかもしれません。
その為、ほんの少しの短い会話の中で、お客様の求めるコミュニケーションの形を感じ取り、寄り添った対応が出来ればと思います。
私がコロナ禍でのサービスで学んだ経験が、少しでもあなたのお役に立てれば、嬉しいです。